その家には夜があった。
子供がねむったところで、夜が訪れる。
テレビのボリュームをさげ、話し声もトーンダウン。
ドアを壊れ物のようにあつかい、閉まるその瞬間まで手を離さない。
寝ている子供が6ヶ月のベイビーなら、なおさらのこと。
かつて自分もそんな風に過ごしてたな。
おやすみなさいと、ふすまが閉められ、
4人家族川の字の両端に麻美と弟が寝る体制に入った。
ふすまの隙間から光が漏れる。
ふすまを通してくぐもった音が聞こえる。
暑いときには窓ガラスに涼を求めて足をくっつけたな。
両端なのに、ちょっかいをだしあって、怒られたこともあったな。
布団の中で隠れて漫画を読むこともあった。
そうして、いつのまにか眠ってしまう。
いつのまにか、夜が更けていく。
いまじゃ、寝る直前まで音がなり、変わらないトーンで話し、
さぁそろそろ寝ようかといったところで、
すべてのものが夜モードに切り替わる。いや、切り替える。
飲んで帰ってきたときなんか、さながらスイッチのように。
更けふく夜なんて、すっかり忘れてた。
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